3500年前からインドにつたわる伝統医学

アーユルヴェーダの起源は5000年前のインドにさかのぼります。
古代インドの聖者リシによって、病気に苦しむ人たちのために活用したことにまでさかのぼるとされています。
「アーユス」(生命・寿命)と「ヴェーダ」(心理・科学)が結合してできた言葉が「アーユルヴェーダ」だと言われており、その意味は「生命科学」「生命の知恵」だと訳されています。
これはアーユルヴェーダが、病気の治療だけを目的としておらず、病気になるまでの過程や予防、日々の健康増進法に重点を置き、トータルに健康を科学するという意味であることを表しています。
また今から3500年ほど前には、バラモン教(古代インドの宗教)の教典、ヴェーダ文献にアーユルヴェーダの起源は記されました。
『リグ・ヴェーダ』『サーマ・ヴェーダ』『ヤジャル・ヴェーダ』『アタルダ・ヴェーダ』という4つの教典が主に有名ですが、アーユルヴェーダはそれら4つの教典から生命に関する知識を集約したウパヴェーダ(=副ヴェーダ)が起源であるといわれています。
『リグ・ヴェーダ』が最初のヴェーダ文献とされており、紀元前15世紀ごろに記されたとされています。
ウパヴェーダには生命科学であるアーユルヴェーダ以外にも、建築学、芸術学、兵法などが記載されています。

アーユルヴェーダともに、世界中に広まっているヨーガもまたヴェーダが起源であるといわれています。
紀元前272年から231年ごろのインド皇帝アショーカにより、アーユルヴェーダの病院が多く作られ、アーユルヴェーダやヨガは順番に世界に広まりました。そして、中国医学やチベット医学など各地の伝統医学の形成に役立ちました。その証拠として、各地のマッサージや薬などにアーユルヴェーダの知識が練りこまれています。
さらにアーユルヴェーダは現代の西洋医学に大きな影響を与えたといわれるギリシャ医学にも関係しているといわれています。古代ギリシャ医学の体質による健康増進法の考え方は、アーユルヴェーダに起源をもつのではと考えられているのです。
また、アーユルヴェーダは「長寿と幸福のための知恵」とも呼ばれており、今やその知恵の数々は世界中の多くの人に実践されています。
分かりやすく易しい言葉で健康の知恵を教えてくれるアーユルヴェーダは、5000年前から現在まで世界中で人々の健康的な生活の知恵として寄り添ってきました。
アーユルヴェーダは季節や時間、年齢などによる心身の変化に合わせた、身体との向き合い方のコツを教えてくれます。
アーユルヴェーダにおいて「幸福」は得るものではなく、「気づく」ものであると考えられています。この考え方は複雑化して幸福の本質を見失いがちな現代において、非常に注目されるようになってきています。
次のセクションでは、アーユルヴェーダが現代に受け入れられるまでになった歴史を学びましょう。