「医食同源」という考え方

アーユルヴェーダにおいて、食事は健康に対して非常に大切な役割を持つと考えられています。
正しい食事は健康な体を作り、間違った食事は病気を引き起こします。
これは心に対しても同じことが言えます。
正しい食事は健全な心を作り、間違った食事は澱んだ気持ちを生み出してしまうのです。
まさに食事は医療そのものです。
正しい食事に気を付けていれば、薬も必要ないと考えられています。
近年、菜食主義や糖質制限など、あらゆる食事法が登場していますが、アーユルヴェーダ食事法がそれらと全く異なる点は、個人の体質に合わせて、個性を尊重して考えられているという事です。
自分自身の体質を知り、体と向き合うというアーユルヴェーダの本質は食事にも当てはまります。
自分に合った食事法は人それぞれ違います。
その点を理解して、アーユルヴェーダの食事法を学んでいきましょう。
食物の消化(オージャス・アーマ・アグニ)
私たちの体の中に取り入れられた食物はどのように消化されるのでしょうか。
食物からの栄養素により、栄養液(乳白色のリンパ液)が作られます。
この栄養液は、体内で徐々に組織を形成していきます。
血液→筋肉→脂肪→骨→骨髄→精子・卵子
全ての組織が形成されたのちに「オージャス」という生命エネルギーが誕生します。
オージャスは免疫力を高め、病気になりにくくしてくれます。
また、オージャスの力で心も前向きに明るくなれます。
オージャスはたくさんの食物を吸収した中から、ほんのわずかしか生成されません。
生命エネルギーが凝縮された結晶のようなものなのです。
ですので、オージャスをできるだけ多く生成できるように食事をすることが大切です。
また、うまく消化・代謝が行われないとオージャスの生成がうまくいきませんので、消化・代謝能力を高めることも重要なのです。
毒素アーマと消化力アグニ
食物の消化がうまく機能しているとオージャスがたくさん生成されますが、うまく機能していないと養分が体内に残り、「アーマ」という毒素を生み出してしまいます。
アーユルヴェーダにおいてアーマは万病のもとであると考えられています。
アーマは舌の上の白い苔として現れたり、身体の中を動き回り、弱っている部分を見つけるとそこに居座り、循環経路を止めてしまいます。
これにより、痛みやコリが発生してしまいます。
アーマが出来ると消化力がさらに落ち、次のアーマを生成してしまいます。
この悪循環に陥ると病気になりやすくなってしまうのです。
消化する力のことを、アーユルヴェーダでは「アグニ」といいます。
アグニとは火を意味する言葉で、食物を燃焼したり、変換、排出する過程にかかわっています。
消化酵素は低い温度ではうまく働きません。また、食べ物を食べすぎてもうまく働きません。
この様子はまさに火の性質に似ています。
火に水をかけて温度を下げると、火は消えてしまいますし、原料である薪を多く入れすぎても火はうまく燃えませんよね。
これを体内に置き換えると、冷たい食物や飲み物はアグニ(消化の火)の力を弱め、食べ過ぎはアグニ(消化の火)をうまく働かなくしてしまうという事です。

アグニはドーシャのバランスの影響をうけます。
例えば、カパが過剰になってしまうと、アグニのバランスが崩れ、消化が遅くなり、体は重くてだるい気持ちになります。
ヴァータが過剰になってしまうと、便秘と下痢が交互に発生したり、消化不良の状況に陥ります。
アグニ(消化の火)をうまく作用させ、オージャスを生成するためには、ドーシャのバランスを保つことが重要なのです。